めんどくさがりの自分の尻を叩く読書ブログ

読書は好きだ。だがめんどくさい。だけれど面白い本を読みたい。だから感想を書いて尻を叩くというブログ。

異修羅Ⅷ 乱群外道剣(珪素著)の感想

 すげえもんを読んだ。

 たいへん面白かったです、前の巻のこととかいろいろ忘れてはいたんですが、それでも問答無用で面白かったです。ソウジロウとロスクレイがかっこよすぎて泣きそう。これ、新鮮な感想のほうがおいしいかなーと思って読了した直後に書いてるんですけど、とにかくとにかく凄かったっす。

 まずは「灰髪の子供」ことヒロトがえぐい。ロスクレイをそもそも戦わせないつもりだった黄都を出し抜いた。そしてソウジロウを病院に閉じ込めておこうという黄都の作戦は甘すぎたと思うんですよね。ソウジロウが戦いをやめるわけがないじゃないですか。修羅ですよ修羅。片足になろうが戦い続ける修羅ですよ。

 あと久々にキヤズナさんが出てきて嬉しかったです、メステルエクシルくん奪還作戦がひたすら暴力的で大変よい。無事にメステルエクシルくんを奪還できるか、次の巻に期待しかありません。

 それから「ジェルキさんお疲れ様」という気持ちが強いです。死ぬわけじゃないんですけど。ジェルキって名前を見るたびに「速き墨だからジェルインキなのかな」って思ってたんですけど、とんでもなく有能なひとでした。すごい。

 ミジアルくんがちらっと出てきたのもとてもとても嬉しかったです。いいぞいいぞ。あとツーちゃんやキアちゃんもちゃんと活躍していてとても良かったです。クゼさんも出てきました。

 とにかくお話のなかに登場する人数が多くなって、ちょっと混乱しつつのところもあったんですけど、それでも「すげー! やべー! すげー!」と読めるお話で大変よかったです。ロスクレイ対ソウジロウ、事実上の最終決戦では???? という壮絶さでした。いやーおもしれー。

 ヒロトの作戦にはめられてしまったロスクレイがひたすらつらくて。ロスクレイはどこまでも英雄でいようと頑張るわけですが、その理由は冒頭にばっちし書いてあるので大変スムーズに理解できます。思えばロスクレイは修羅たちのなかで唯一の「ただの人間」ですからね。どんなに訓練しようと修羅たちにはかなわないわけで、だから援護射撃や詞術の援護を使うわけですが、とにかく戦いたいソウジロウには「それで勝って楽しいのか」ってなるんですよね。ソウジロウやべえな……。

 

 来年一月からアニメ放送と帯にでかでかと書いてあって期待が高まっております。しかしどこまでやるんだ? 1巻から区切りのいいここまで8冊あるぞ? もしかして2期あったりするんでしょうか。期待して待とうと思います。ソウジロウ、クラシカロイドのモツさんの人なんですよね(例が古い)。楽しみです。

 

 面白かったです、オススメです!

バテン・カイトス日記 2023/10/11 小天河

 

 いや前回漁村ナシラで今回が小天河ってのろいにもほどがあるでしょうよって話ですが。
 実のところ中学時代はリュードに狂っていたのでギバリの記憶があんまりなくてですね、漁村ナシラのイベントでギバリのかっこよさに当てられて「ヒョエエ〜!!!!」となったりしていました。
 いやあギバリかっこいい。そしてなぜギバリと打ち込むと変換候補にクアッカワラビーが出てくるんだわたしのスマホ。いやそんなこたぁどうだっていい。
 中学時代は「おっさん」という認識しかなかったギバリなんですけど、ひたすらカッコよくて震えております。なんというかしきたりに縛られないあたりがカッコいい。まあギバリの来歴を思うと漁村ナシラのしきたりはそもそも関係ないひとなんですけど。
 いやあ歳をとってみるとギバリの渋さがよくわかるってもんです。わたくし今年の誕生日でギバリとタメなんですけど、あんな渋い色気ぜったいに出せないっすよ……。


 ギバリの色気はともかくまたしばらくレベル上げをしたほうがよさそうです。雑魚敵のカニッパが地味に強い。眠り効果のある攻撃をしてくるんですけど、よくカラスが眠らされてボコられております。
 カニッパ、よく見るとふんどしに「酒」って書いてあるんですね。倒されたときの断末魔、リマスター版だけなんでしょうか。雑魚敵すらも愛おしいすごいゲームだ……眠らされるのはやめてほしいけれども。
 ごはんを炊くためにヘルメット集めをしなきゃいけないし、小天河の雑魚が地味に強いし、効率よく進めるべく腐ったフルーツ盛りを作らなきゃいけないしで、なんだかんだ忙しいです。しばらく小天河と漁村ナシラを行き来することになりそうです。大雷魚、推奨レベルはどれくらいだったかさっぱり思い出せない……。
 バトルも楽しくなってきました。役をつくるのはまだ先ですが、ギバリの必殺技が「昔騎士だったころに接待ゴルフとかしたのかな……」と思ってしまうのが楽しいです。レイドカーン王とギバリ、いま思うと相当な沼のような気がします……。
 ギバリ、とにかく頼れるひとだ……と思います。騎士だったころはさぞかし素敵だったんだろうなあ。中学のころの「おっさん」という認識は改めたほうがよさそうです。だってわたしも今年の誕生日でギバリとタメだし……。


 あと今回うっかり雑魚に黄色いバナナを投げてしまって「ああああー!!!!」となりましたです。もったいない。
 あと余談ですが酒場の女将のアナさんが素敵です。美人の強い女という感じ。
 バテン・カイトス、こんな面白いゲームだったんだなあとしみじみと思います。中学時代にいい体験をしたんだなあ、と思いながら遊んでいます。
 大雷魚を倒したあとどういうストーリーで城に向かうかちょっと忘れてるんですけど、そこは楽しんで進めようと思います。もう初見のみなさんが2に取りかかっていて頑張らねば……と思っています。今年中に例の事件まで辿り着きたい……。

バテン・カイトス日記 2023/10/7 漁村ナシラ

 


 いまさらながらバテン・カイトスのプレイ日記を書いてみようと思います。なら始めたときから書けよという話なんですけど、始めたときは懐かしすぎてそれどころでなかったし、だいいち1をちゃんと最後まで遊ぶかわからなかったのです。

 いままで何回か、健在のゲームキューブに健在のバテン・カイトスを突っ込んで遊んだけれど、途中でやめてしまっていたのです。それはおそらくいちいち三色の端子のある古いテレビが置かれた部屋に行くのが面倒だというわりとくだらない理由だったのかもしれません。
 しかしスイッチのリマスター版を、発売当時ガチ病人で遊べなかった2目当てで買って、とりあえず1をサワリだけ遊んでみっか、と始めたら、面白くてたまらない状態になってしまいまして……。
 グラフィックも音楽もストーリーもシステムも完璧なすごいゲームだ……という認識は変わっていないんですが、ゲームそのものについてはきょうはここまでにしておきます。

 

 なんで1を最後までプレイする確信を得たのかというと、ひとつサブイベをとり逃してしまったからです。
 最初の舞台サダルスウドの都市、古都フェルカドの「花は生きている」というサブイベを領主の館をクリアする前にやらないと、サダルスウドを脱出してまた戻ってこられたタイミングでしかこなせないのです。しかもこのイベントで手に入るマグナス(要するにアイテム)は、次の舞台ディアデムの漁村ナシラでのサブイベに必要なのです……。
 なんとしてもサブイベを全部埋めたい。そう思って本棚で埃をかぶっていた攻略本を出してきて、チェックしながらやっていたのにこの体たらくなわけです。そういうわけで、サブイベ完全制覇を目指して頑張ってみようと思ったので、少なくとも例の事件までは遊ぼうと思っています。

 サダルスウドも風光明媚な土地だったけれど、ディアデムのマップも美しいです。到着した漁村ナシラには、中学時代の最推し(当時は推しなんて言葉はなかったですが)であるリュードがいます。
 漁村ナシラに入ったところで、カラスたちがリュードを見つけて警戒するイベントが発生するのですが、そのシーンでリュードはのどかに鳥を見ていて、もうこれだけで悪の帝国軍として敵対するキャラクターでないのが分かるというわけですよ。行間がすごいんじゃ!!!!

 モブひとりひとりに人生があるのもまたいいなあと思います。懐かしいタイプのRPGなので、民家に勝手に入って棚だのツボだのを調べるわけなんですけど、家のなかを調べたり、モブと話したりしてみると、一人ひとりに人生があることを感じることができます。
 中学のときはただストーリーのクリアだけを目標にしていたため、アイテムさえいただければそれでよかったのですが、モブの人生に想いを馳せるのもまた楽しい。漁村ナシラで、父親と母親を失い祖母に育てられている、というモブの子供がいて、「いやモブに背負わせるもの重すぎない?!」となりました。

 

 なにより、大人になって遊んでみると、中学のときは年上のお兄さんお姉さんだったシェラやカラスやリュードが年下になっていて、そのうえなんと今年の誕生日でギバリとタメになるという事実がひしひしと迫ってくるわけです。
 中学のころは見目麗しいカラス・シェラ・リュードの3人ばかり戦闘に出していたのですが、ギバリやサヴィナやミズチさまのボイスもしっかり聴いてみたいと思っています。写真セリフや挑発ボイスなど、初めて遊んだときは聞けなかった、聞いてみたいセリフがたくさんあるので。なおわからない方に解説すると、このゲームはモンスターをやっつけてもお金にならず、モンスターの写真を撮って売って稼ぐ、という謎のシステムがあるのです。
 ただ問題があって、サヴィナは動きが速すぎて、いまよりナンボか反射神経のよかった中学時代でもうまく扱えなかったのです。頑張ってみるほかないなあ……という気持ちです。

 

 思えば中学のころはそらでカラスとリュードと、敵キャラのフォロンを描くことができたわけで、イラスト描きたい欲がふつふつとわいてくるのですが、どうせ顔しか描かないので落書き帳を買うのは思いとどまっています。
 フォロンは悪役ですがたいへん好みのキャラクターだったので、ガラケーの待ち受けにしていたくらい好きだったのです。早くヤバそうな注射を打ちながら戦うフォロンに会いたいなあと思うのですがフォロン戦はまだまだ先です。

 たぶんここから進めていけば、中学のころは見つけられなかった気づきや、知らなかった感情を得るのだと思います。
 とりあえずサブイベのいちばん規模のでかい、「系譜集め」の依頼者であるクズマーンがマジでクズだと思えただけでも収穫かなあと思っています。中学のころは「このおじいさん若いころモテたんだなあ」と思っていたのですが、あちこちに女を作って子供やら孫やらがウジャウジャいるというのはいわゆる一つのクズではないのか……? と思っております。

 

 そういうわけで、不定期でコツコツと日記を書いてみようと思っています。途中で飽きて突然2を始めたらそのときはスライディング土下座をしようと思っていますので、なにとぞお付き合いくだされば幸いです。

SPY×family12(遠藤達哉著)の感想

 すごく面白い漫画を読みました。

 表紙のハンドラーさん優雅。しかしカバーを外すとカピカピでかわいいです。まさに干物女。電書版を貼ったんですけど電書版もカバー下って読めるんでしょうか。紙の本のそういう遊び心が好きです。

 前の巻でバスジャック事件が起きて、それで平然としているアーニャが人気者になるという冒頭がおもろいです。「庶民ってなに食べてるの?!」ってクラスメイトに言われてるの、果てしなく超絶お金持ちの学校だ……。そしてダミアンがなかなかかわいいのですが、しかしこの2人ロミオとジュリエット的立場なんですよね。

 漫画本編とは関係ないんですけど、アニメのアーニャ役の声優さんの結婚報道をXで見ていたら「アーニャ、俺以外のやつと結婚したのか」というダミアンの場面写を使ったポストがバズっていてゲラッゲラ笑ってしまいました。

 そんなこたぁどうだっていい。今回もキレキレのスパイアクションギャグ漫画でした。奥さんが怖くて仕方がない寮の先生とか、ハンドラーの犬のアーロンとか、ヨルさんが職場の人たちに「夫への不満があって当然」みたいなことを教えられてロイドに不満を訴えようと頑張ったりとか、楽しいお話もキレキレでしたし、機密情報を持ち出されての緊急事態もキレキレでしたし、いやあ楽しい。最後のほうでユーリと戦うユーリに化けた「黄昏」のくだりがすごく良くてですね……。

 面白い漫画ってこういうものなんだなあと思いましたです。いやあ続きが楽しみすぎる……アニメ2期も期待がふくらむぞ……!

 なんとアニメの公式サイトを見ていたらですね、秋田県でも2週間遅れながら地上波で観られるって書いてあったんですよ! アベマに頼らなくても流行りのアニメ観れるってすごくないですか?! すごくないのか、そうか……。

 この手の人気アニメを夜中に別系列で流すやつ、だいたいなんの告知もなく始まるので大体見逃すので(それでチェンソーマンを諦めました)、アニメの公式が告知してくれるのは嬉しかったです。でっかいがめんでアーニャみれる、わくわく……! というような心境です。

 それはそれとしてアニメと言えばオマケ漫画でロイドがフランキーとアーニャの教育用アニメを作る話があって、それもゲラゲラ笑いながら読んでしまいました。そりゃそうだそんな学校で流すようなアニメ、アーニャみたいな小さいお子さんには面白くなかろうよ……。

 

 とにかく今回もめちゃめちゃのめちゃめちゃに面白かったです。安定! って感じでした。オススメです!

獄門撫子此処ニ在リ(伏見七尾著)の感想

 すんげえものを読んだ。

 怪異と戦う巨大感情! といった趣きの、たいへん熱くて切ないお話でした。またしても角刈りの文庫本を作ってしまった……。

 いやあガガガ文庫すげえわ。書籍化するならガガガ文庫から本を出したい。ヤベェ本の仲間になりたい……。

 大雑把に言うと、怪異と戦うのが仕事の女子高生にして鬼である撫子と、得体のしれない謎の美女アマナの巨大感情が怪異と戦うお話でした。そして怪異がどれも見事に恐ろしい。そして撫子は怪異を肉にしておいしくいただいてしまうのです。撫子はふつうの食べ物も好きですが、彼女にとって栄養になるのは怪異の肉だけなのです。だから魚型の怪異が出たときに、「あんきも」と言ったりする細かいところが大変かわいいです。

 撫子とアマナの細かい会話がとても楽しくて、会話のシーンはニコニコしながら読めるのですが、怪異がことごとくヤベェのがいいと思います。そして京都ネタがふんだんに練り込まれているのも大変よいです。いや京ことばで話すキャラクターはほぼいないんですけど。

 強いヒロインが大好きなわたくし、たいへんワクワクしながら読んでおりました。怪異と百合って相性がいいのかもしれません。「裏ピ」みたいに科学からアプローチしても、この作品のようにファンタジーからアプローチしても、強い女の百合は怪異と料理するといい塩梅の味付けになるようです。まあそこは作家の力が大きいのだと思うのですが、これほどのものをお出しされてしまうと「撫子ちゃんもアマナさんもかわいいねえ痛そうでかわいいねえ怖がっててかわいいねえ」になってしまう……。

 なにより最後のほうの展開とラストが非常によいです。撫子の生い立ちのヤバさがすごい。そしてあのラストよ……尊いじゃないの……。主にアマナのほうから向けられる巨大感情と、それに対する撫子の巨大感情の激突、最高オブ最高でした。最後の1ページにいたるまで完璧。面白かったです。

 そんでもってサブキャラたちもかわいいのです。冠さんの子煩悩ぶりとか四月一日さんの適当ぶりとか真神さんのスイーツ好きとか。全員激しくキャラクターが立っていて、誰かわからなくなることがないんですよ。すげー。

 いやあ面白かった。ガガガ文庫は本当に面白い本を作るレーベルだ……この本を買ってきたのは実はツイッターで編集者さんがビスコの瘤久保先生の感想を載せてたからなんですけど、確かに瘤久保先生の感想にも納得の内容でした。満足!

 ガガガ文庫のせいでふせんの消耗と本棚のスペース減少が激しいです。シリーズになるのかな。もっと撫子とアマナを読みたいなあ……。

 

 面白かったです!

映像研には手を出すな! 8巻(大童澄瞳著)の感想

 あやうく買い忘れるところでした。新刊情報アプリ、通知してくれ~!!!!

 ビスコ新刊で舞いあがってて漫画の新刊アプリをしばらく見ていないうちに新刊が出ておりました……いまさらですが感想をば。

 まずはソワンデ書記がいい。書記が映像研のために戦ってくれる展開、たいへんよいです。むしろ生徒全員が映像研の味方なのもたいへんよい。

 というか大人どもがとにかくわかりみの深い嫌なキャラなんですよね、「高校生だから青春を」とか「アニメは子供が見るものだから流血はだめ」とか。大人な~! と、大人の勝手な価値観を押しつけてきて、映像研の作品から流血表現を削除させようとします。

 それに対して映像研が「中二病」「グロテスク」でない「ただの血」を目指そうとがんばるのがとてもいいです。その通り、細かい部分をつつかれない作品を目指すというのは大正解だ……と思います(ライトノベルの新人賞一次落選でももらえる選評で「そこつつく?!」となっていたので)。

 「観てみたいなら観るとよいです。観たくなきゃ観ない。アニメって、そういうもんじゃし。」という浅草氏の言葉通り、アニメは観たい人が観ればいいのです。嫌いなら観なきゃいいのです。どんなコンテンツでもそれは言えると思います。浅草氏すごい、真理だ。朝ドラのアンチタグでXにポストするやつに聞かせてやりたい。

 テレビ局がやってきて密着してくるエピソードも、もともとある「部活青春モノ」のテンプレートで撮影しようとしてスタッフがそのおかしさに気付くのがいいです。青春というのは大人があとから考えるものであって若者当事者は頑張って生きているだけなのです。

 そして芝浜高校の正体がちらりほらり分かってくるのもとてもいい。次の巻では芝浜高校を舞台にアニメを作るんですね。とても楽しみです。忘れずに買おうと思います。自戒を込めて。

 いやあ面白かった。みんなのゆるい顔がかわいい。あとおまけのネームが概ね文字だけなのがすごいなあと思うなど。たぬきは正義。

 しかしこういうのを読んじゃうとやっぱり「アニメ二期を……アニメ二期……アニメ二期ほしいよ~」になっちゃいますね……。あの浅草氏のハスキーボイス好きだったんですよ。「ひよっこ」の米子。さいり(漢字が出なかった)ちゃん、来年の春からの朝ドラ主演するから厳しいかな……。

 映像研、どんどん加速度的に面白くなるすごい漫画だ。傑作じゃん……。よし星雲賞受賞させよう。

 なにより問題児として育った人間からすると、大人たちに反撃する展開がひたすらまぶしいのです。面白かったです、オススメです!

錆喰いビスコ9 我の星、梵の星(瘤久保慎司著)の感想(ネタバレ注意)

 すんげえものを読んだ。いささか放心気味ですが感想は新鮮なほうがおいしいので、とりあえず感想を書きます。

 ビスコが二人だ! 公式も幼児化とか猫化とかやりたい放題してきた作品だけど、遂に女体化までやってくれたぜ! と嬉しくなって読み始めるわけですよ。しかしこの女子ビスコことレッド、とんでもない修羅の道を歩いてきたのです。

 レッドはいままでのビスコたちが冒険していた「白時空」の反対にある「黒時空」で、「錆神ラスト」と戦いミロやチロルを失いながら白時空にやってきました。そしてスペックはビスコと完全に同じなのですが、表紙絵にあるとおりの全身の刺青は、いままで死んで魂を吸ってきた仲間たちなのです。

 今回もパワーワードが連発されるすげえ物語でした。やはり錆喰いビスコは愛の物語だ……全智の徒。

 ……ここから先はちょっとネタバレを含みます。いつもネタバレ上等でブログを書いてきましたが、今回はさすがにネタバレしないで読んでショックを受けて欲しいので……。

 

 いやさ、いきなり最後に話は飛ぶんですけど、このシリーズが「つづく」で終わるのは始めてじゃないすかね。しかもかなりガチめの「つづく」だよ!!!! 次の巻は確実に最初から最後までクライマックスのやつじゃないですか!!!!

 まあ信頼と安心のビスコなので大丈夫だろう! とは思うものの、3巻で流星になって終わったかもしれない作品なので、そういうことになってもおかしいことはなんにもないのです……。ましてや次の巻が最終巻の予告まで載ってるんだから……。

 ンナバドゥという羽虫がラスボスになるんですけど、こいつがとにかく卑劣でビビります。錆喰いビスコの悪役は「滅んでくれ~!!!!」となる悪役ばかりなのがいいのですが、ンナバドゥが滅びちゃうとレッドたちも滅びちゃうってなったときの絶望たるや。

 みんな楽しく物語が終わる時空は存在しないんでしょうか。ハッピーエンドがみたいよ~(突然のケルシンハ)。いやそこは瘤久保先生の頭脳にかかっているわけですけれど。

 あと途中で登場するイケメンアムリィ、ああこれはイラストで見たいな……と思っていたらばっちしイラストが入っていました。ほかにも「ここだー!!!!」というタイミングでイラストが入っているのが嬉しいです。

 ホラー映画が怖いビスコとレッドがかわいいです。二人ともチェスのルールを覚えられないのもかわいいです。

 それにしても本当に……愛でした。そりゃもうBIG LOVEですよ。最高だ。「誰も、見返りのために、お前を愛してはいない。」というビスコのセリフが本当に痺れる。最高だ……。まあそれを言っているビスコは鬼ノ子の姿になってるんですけど。

 

 さて、アニメ2期が決定したわけですが、原作最終巻とアニメ2期のどっちが早いでしょうか。アニメ2期、2巻を丁寧にやってほしいvs3巻ぶんまでやってアクタガワと山手線の戦いを映像で見たいという戦いを心の中でやっております。

 このブログをここまで読んでいるということは最後まで読んだかネタバレ上等かのどっちかだと思うのですが、とにかく面白かったです。一瞬で読み終わっちゃった。

 みんな! 錆喰いビスコはいいぞ!

かくて謀反の冬は去り(古河絶水著)の感想

 ものすごいものを読んだ……(放心している)。

 なるほど賞をとるわけですわ。納得です。逆にこのレベルでないと受賞できないと思うと「ひえええプレッシャー!!!!」となるわけですが、とにかくものすごかったです。

 まずは世界の様子が独特なんですよね。初めて錆喰いビスコを読んだときみたいな、いままで全く見たことのない世界が舞台でした。父王祖父王の肖像画がいわゆる「卑弥呼さまー!」の美豆良スタイルで登場人物の名前が古代日本風なのに、20世紀初頭くらいの文明程度に見える世の中で、全く見たことのない世界が舞台です。たいへんわくわくと読みました。

 宮廷陰謀ストーリーという、ライトノベルではなかなかなさそうなお話なのもよかったです。主人公の奇智彦(クシヒコ)は左半身が不自由な王家の末の王子なのですが、彼がまさに奇知で状況を切り抜けていくのは「おおお……!」と熱くなること必至です。

 表紙のファンタジーでかい女は荒良女(アラメ)といい、奇智彦に贈られた奴隷なのですが、彼女のストーリーへの絡み方がたいへんいいです。熊には人間の理屈は通らないのです。強い。カッコイイ。最高すぎる。

 2ページに一回くらいパワーワードのでてくるすごいお話だったので、ふせんを貼りながら読んだ結果角刈りの文庫本が出来上がりました。いやパワーワード多すぎるでしょ。破壊力抜群すぎる。

 宮廷陰謀モノですが実際の戦闘シーンはあまり出てきません。ナイトメアフレームに乗らないコードギアスとでも言えばよいのでしょうか。いやもっと緻密な感じがする。シェイクスピアのオマージュということなのでアニメより演劇舞台のほうが合うかもしれないなあ、と思いながら読みました。

 キャラクターだと石麿と幸月姫が好きです。石麿は奇智彦の従者で、ガタイと顔のいいバカです。いろんな人に奇智彦とボーイズがラブな関係なのかと疑われたり、その筋のひとにお尻を眺められたりするガタイと顔のいいバカです。本当に愛すべきおバカさんなのですが、終盤の奇智彦の命令で行動するシーンのカッコよさときたら。

 幸月姫はまだ小さい、奇智彦の姪っ子で王女さまです。かわいい。奇智彦にめちゃめちゃ懐いてて「くしさま」と言って膝の上に乗りたがります。彼女も最後の方の展開がすごいのでとにかく読んで確認してください。すごいっすよ。

 いやあすごいものを読んだ。これは傑作ですよ、確かに好き嫌いはありそうですが、わたしにはめちゃめちゃぶっ刺さりました。キャラクターがみんな魅力的だし、見たことのない世界を見せてもらいました。

 見たことのない世界を作り出す才能というのは稀有なものではないでしょうか。すごい。真似しようとしてできることじゃないっすよ。とにかく面白いからみんな読んでほしい。

 好きなライトノベルがまた増えました。ガガガ文庫は本当にいい本を作られるレーベルだ……いつかガガガか電撃からデビューしたいと願う人間としてはたいへん刺激になりました。

 すごく面白かったです! 激しくオススメです!

【番外編】君たちはどう生きるか観てきた!(8/18追記)

 宮崎駿の原液を浴びてきました。いやあ面白かった。すばらしい映画でした。あの年齢でこれだけ創造性豊かな世界を生み出せるというのは、人生残り五十年くらいになった人間としては大変安堵するとともに、のちの世界の人間はあれを乗り越えねばならないのか……というプレッシャーもものすごかったです。いや自分を宮崎駿と比べるのがおかしいのだけども。

 ツイッター(もうXですかね)でもネタバレが徹底的に避けられているので、あまり具体的な内容に触れるつもりはないのですが、宮崎駿の大好きなものをぎゅっと詰め込んだ(のであろう)お話でした。いままでの宮崎駿作品に出てくるやつ(壁を登る、階段が壊れる、ドロドロしたなにか、強い婆さん、食事のシーンなど)がいろいろ出てくるのは「宮崎駿だ……」という安心感がありましたし、いわゆる三幕構成とかハリウッド式脚本術とはぜんぜん違う仕組みで組み立てられているのではないだろうか、と思うなどしました。

 あとペリカンとインコの圧が強い。鳥恐怖症のひとはやめておいたほうがいいかもしれません。でもインコ大王が好きです。それから婆さんがワラワラ出てくるところとか、ちょっと千と千尋の神隠しに似ていたかもしれません。

 主人公が自分の本質に気付くシーンがとてもよかったんですよね。あと主人公の声が菅田将暉(8/18追記へ)で、ちょっとだけ朝ドラ「ごちそうさん」を思い出しました。ヒロインの息子の役で出てたあれ。まああの朝ドラ、ほかの出演者のごたごたで印象変わっちゃったんですが……。

 演者さんといえばエンドロールを見ていて「え?! この人どこ出てた?!」という生身の俳優さんがずらりだったのも印象深いところでした。滝沢カレンどこに出てたんだ……。

 なんというか、良質な児童文学のような話でした。これは子供さんに見せてあげたい。難解なところが少なくてワクワクできるお話で、もっと子供さんが見にいきたくなるヴィジュアルとかコピーとかコマーシャルとか用意すればよかったのに、と思ったりもしました。

 これが宮崎駿の遺言なのか、はたまた「わしゃまだまだできるぞいイッヒッヒ」なのかは分かりませんが、やはり宮崎駿の想像力は尋常でない。すばらしいものを観ました。

 

 それはそれとして流行りの映画を観にいくのに片道一時間かかるのいい加減にせえよ。まあ例によって連れてってくれた叔父上と車のなかで「ガンダム水星の魔女」の話でめちゃめちゃ盛り上がったのですが。叔父上はガチのガノタかつガチのミリオタなので、「水星の魔女」でテロリストの扱いが甘すぎる、と語っていました。シャディクは極刑もありえるぞと言っていたのが印象深いです。叔父上は士郎正宗の「アップルシード」が好きなので、「テロリストに人権はない」というセリフを持ち出してきて(書物の内容をさらりと覚えている……!)とビビったりしました。

 映画を観にいくだけで県境をまたがねばならない僻地の民ですが、今年は例年になく映画観てるな……と思っています。まあこれで三本目だからどれだけ映画に縁遠いんだという話ですが。

 

 面白かったです!

 

 8/18追記

 えー、きょうになってこの映画のキャストが公式に発表されまして、主人公の声が主人公と下の名前が同じ人で、菅田将暉アオサギであることがわかって「まじかよ」となっております。どんだけわかんないの……。それから滝沢カレンの役が分かってすっきりしました。

 たぶんジブリ映画が声優さんでなく俳優さんを声に起用するのは声でイメージが決まらないからじゃないかと思いました。

魔王都市 空白の玉座と七柱の偽王(ロケット商会著)の感想

 とんでもなく面白い本を読んだ。

 ガガガ文庫の公式さんがなにやら盛り上がっていたので、辛抱たまらず発売日をだいぶ過ぎてからイーホンくんでポチッたのですが、大正解優勝でした。

 カタブツ新人騎士・アルサリサとスレたベテラン騎士・キードのコンビが大暴れする非常に痛快かつカッチョイイ作品です。もうお話のなかで起こること全てが面白い。傑作ですよこれは……。

 この物語の世界ではいわゆる警察官を騎士と呼ぶわけなのですが、キードの所属する四課のみなさんが面白いのにみんなすごくてびっくりしました。バケツくんが大好きです。人間が消耗備品扱いになってるの「され竜」以来で見ました……。

 カタブツ新人アルサリサの食いしん坊具合とか子ども扱いされると怒るところとか、とにかくカタブツエリートなのに可愛いです。アルサリサは最初、ギリギリ犯罪になるかならないかみたいな手段を取るキードに反発するのですが、次第に信頼が湧いてくるのは胸熱です。なにこれ最強タッグ????

 舞台になっている魔王都市はとにかく治安が悪いところなんですけど、治安が悪くなると警察も強い手段を取るというどこかで聞いた話を思い出します。それから戦闘シーンがとにかくスタイリッシュ。キードめっちゃかっこいいんですよ……。

 あとレトリックと心情描写がとにかくいいです。付箋だらけにしてしまいました。こんだけ付箋を貼る本なかなかないってくらい付箋貼りました。そりゃもう夢中で読みましたよね……すごくよかった、ひたすらすごくよかったです。

 あと悪役のみなさんがとにかく魅力的なのもいいです。イオフィッテちゃんさん様かわいい。あとハドラインさん気持ち悪い(盛大に褒めている)。

 やはりガガガ文庫はよい本を作るなあ……と思いました。アニメ化しましょうよ。コミカライズもしましょうよ。ぜったい面白いから。

 

 というか新作のライトノベル、それも新しく構築された世界のものを読むのが久々でして、なんと表現すればいいか、脳みそが追いついていくのが大変快感でした。この世界ではこういう武器があって、こういう敵がいて……というのを理解していくのがとにかく気持ちいい。内容はほぼ魔族の「ヤのつく自由業」の抗争なんですけど、ちょっとずつ謎が解けていくのも快感です。

 とにかく面白かったっす。ぜひ続きを出してほしいです。アルサリサとキードのコンビをもっと読みたいし、ラストシーンのキードが気になりすぎるのです。

 

 面白かったです、オススメです!

逆転ランキング 算数が支配する学園(りょくち真太著)の感想

 たのしい本を読んだ。

 尊敬してやまないりょくち先生の最新作は算数でした。小説だけでなく算数というより知恵試しのクイズに近いんですけど、「ううん? ……わかんね」となる問題がいろいろと載っております。

 わたくし金澤、小学校は算数さえなければ全科目余裕で100点を取れる成績だったので、逆に言えば算数及び数学はとにかく苦手だったのですが、この児童書の問題はなんというかとてもいい塩梅に頭を使う感じでした。いや全問「ううん? ……わかんね」だったんですけど。

 舞台は算数バトルでポイントが増減し、そのポイントのランキングで地位が決まるというわたしとしては悪夢のような「数知学園」という、エリートしか入れない小学校です。主人公の亡くなった父親はそのバトルの仕組みを開発したのですが、生徒会が勝手にランク外になったひとを使いっ走りにするルールに変更してしまいます。主人公、誠志郎はそのルールを父親の望んだものに変えたいと、目立ちたくないので先生に指されても「わかりません」としか答えない天才少女・天音とてっぺんを目指します。

 人間の醜い本質が子供さんでも怖くない程度に描かれていて、誠志郎は上位7位である進藤先輩が悪意に満ちた行動をとるのをきっぱりと拒絶しバトルする……というのがクライマックスでしょうか。いやあ続きが読みたい。すごくいいところで終わってるんですよ、生徒会長と戦うところが読みたい。

 個人的に石とりゲームのくだりは「され竜と藤井聡太のインタヴューでみたやつだ!」となりながら読みましたし、ペットボトル二本で400ml測る問題は「正解そんな簡単なの?!」となりました。いやあ面白かったです。

 相変わらず算数は不得手なままなのですが、凝り固まった頭の大人だからわからなかっただけで、本職の小学生さんなら楽しく考えられるのではないでしょうか。

 あと天音ちゃんが目立たないように頑張る理由が天才の苦悩を感じます。勉強は楽しくなきゃいけないですよね。

 本当に続きが気になるのでみんな買って読んでくれ、りょくち先生に続刊を書かせねばならん。知恵試しにピッタリの問題がいっぱいで楽しいしなによりストーリーが面白いんだ。誠志郎が目指すところに着地できるのか大変気になっております。

 算数とか数学ってだいぶ才能による分野で、わたしには悲しいことにその才能がないんですけど、面白い問題を考えてウンウンいうのは楽しいというのは知っています。小学校のころに「中学受験のない秋田県の小学生に算数の良問を」というコンセプトの問題集を買えるという案内が来たのですが、もしかしたらその問題集にこの本みたいな問題が載っていたのかもしれません。当時は「田舎だからってバカにすんな」と思っていたのですが。

 考えるのは楽しいというのがよく分かる本でした。面白かったです、オススメです!

七つの魔剣が支配するⅫ(宇野朴人著)の感想

 すごいもんを読んだ。

 アニメ化で話題の電撃文庫の人気作、といえば「あー面白いライトノベルなんだなー」となると思うんですが、なんというかいやはや……(腕を組んで天井を見上げる)。

 序盤からボーイズがラブな展開がドンドコ続きまして、しかも致してしまうのだから驚愕しかない。いやあれは厳密にはボーイズがラブじゃないのかな。いやわからない……ひたすらにショッキングで……。

 オリバーに虐待された過去があるのは以前の巻で知っていると思うのですが、それを知らないからああいう行動に出るんだよなあ……という気持ちもあり、とにかくそのあたりは読んでほしい。とにかく絶望的でショッキングだから。わたしは本を読んでショックを受けるのもまた読書の醍醐味だと思っているのですが、まさにそれが実現したようなお話でした。本当にさ……。

 後半戦ではガイの意外な特技が披露されます(そんなかくし芸みたいな楽しいものではない)。ガイ、こんな才能があったなんて。こっちもひたすらショッキングでした。オリバーたちと並ぶためにそんなことをするなんて……という。そして窮地のガイを助けようとするみんなが優しい、本当にみんなが優しい。

 でも新キャラのファーカー先生がいちばんやばかったかもしれない。大賢者らしいし実際異様に強いのですが、なんでキンバリーの教師になったのか謎なんですよね。最後らへんの異様な強さ、この先この人がオリバーの前に立ちはだかったら……と思うとゾワゾワします。

 あとピートの実家がふつうにひどい。そりゃ普通人家庭枠でキンバリー入るわなーって思いました。ピート、どんどんヤバいほうに滑っていって怖いです。

 というかいつものみんながどんどんヤバい方向に傾いていくのが恐ろしい。頼むよみんな正気で幸せになって……と思います。もう一年生くらいのときのワクワク魔法学校は戻ってこないんだろうなーって思うと……。

 

 そういえばこのあいだからアニメが始まったわけですが、一週間待たなくてもアベマで観られてたいへん嬉しいです。でもアニメから入ったそこのあなた、ぜったい一巻から順番に買って読んで。いきなり十二巻から読めば「は?!」ってなるから。ビスコがアニメになったときにいきなり八巻から読んで混乱しているひといたので……落差という点ではビスコ以上なので。ほんとに。

 とにかくいろいろすごいお話でした。ティム先輩はかわいいしヴァロワさんの暴れぶりもものすごい。いやあ面白かった。ショッキングという方向で。

 

 面白かったです!

プリニウスⅫ(ヤマザキマリ/とり・みき著)の感想

 すげえ漫画を読み終えた。

 10年かかって着地した古代ローマの「元祖・台風の日に水路見にいっちゃうおじさん」の冒険譚、ついに最終巻です。いやあ面白かったっす。

 まずは懐かしいひと大集合なのがよかった。キャベツのひとが皇帝になってたりフェリクスさんが相変わらず武闘派だったりプラウティナとその子供も元気そうで、とにかくよかった。猫のガイアも出てくるよ! 超ご長寿猫だ! あの謎の子供が大人になって出てきたのも大変よかったです。

 みんな歳をとってましたが幸せそうでよかったです。もちろんウェスウィウス火山が噴火して大変なことになるのですが、プリニウスとにかくぶれない。家族を逃がして、それでもウェスウィウスの様子をエウクレスに記録させます。本当にこの人は最後まで「元祖・台風の日に水路見にいっちゃうおじさん」だったのだなあと……彼の最期のシーンが本当によかった。博物誌に書かれた奇妙な生き物たちは、彼の中では間違いなく存在していたわけですね。いやあたいへんによかった。

 この物語で好きなのはやはり地中海から南のあたりを冒険するお話なのですが(ミノタウロスとか謎の機械とかのあたりが特に)、一方でネロとポッパエアのドロドロした関係とか初期のキリスト教徒が迫害されるあたりとかの歴史ロマンとしてもたいへん面白い作品でした。よし、えねっちけー土曜深夜の枠でアニメ化しよう。

 

 思えばこの作品の感想をここに書くたびに公式ツイッターリツイートされて「エゴサやべえな?!」となったり、そのうえこのブログの内容を引用してもらったり、とにかく楽しかったなあと思っております。

 本当に面白かったです。巻末の対談までばっちし面白い。共作って大変なんだなあ……とソロでラノベワナビをしているわたくし、しみじみ思いました。

 というかきょう(2023/7/10)はラノベワナビの祭りである電撃大賞一次選考通過発表の日でして、そのプレッシャーから逃げるべくプリニウスを読みブログを書いております。いやあ面白かった(そう言って現実から逃げる)。

 プリニウスは間違いなく「人生で出会えてよかった漫画」だと思っております。いやあ傑作じゃった。大プリニウスという男の生涯、しかと見届けました。小プリニウスって大プリニウスの甥ですよね、小プリニウスもそういう人になるんだろうなあという描写もたっぷりあって余韻が素晴らしかったです。

 

 未読のひとはいまからでも遅くないから全巻買って読もう。面白いから。

 とにかくバチクソに面白かったです。みんな読もうな!

じょっぱれアオモリの星2 ズンダーにおいでよ(佐々木鏡石著)の感想

 すこたまおもへぇ本の続編どご読んだ。

 ツートな津軽弁魔術師異世界物語第二弾です。すこたまおもへがった(すごく面白かった)です。

 今回の舞台はサブタイトルで分かるとおり(分かるか????)宮城県であります。宮城県は東北の民からすれば大都会仙台のあるすごいところなのですが、本作はひたすら宮城県を擦りまくる展開となっております。

 まずは序盤、仙台ゆかりの某球団とか某お笑いコンビとかが異世界でも無理のない形で出てくるのには読みながらめちゃめちゃ笑いました。上手い……世界観の構築がひたすら上手い。なんだこれ傑作???? と、東北の民わたくし大笑いしてしまいました。終盤にはスキルの名前として某野球選手が登場します。

 それだけでなくちゃんと異世界ファンタジーもやっていて、新しくズンダー公国の姫君イロハが登場するのですが、例によってオーリンは「イ」と「エ」の発音が区別できなくて大変なことになります。しかもあとがきを読めばわかるのですが「イロハ」はちゃんと東北というか仙台にゆかりがある名前でした。すげー。著者が歴史に詳しいのが伝わってきます。

 マツシマでのバトル展開が大変熱くて、イロハちゃんが可哀想でよいですね……そしてレジーナのスキルが実は……という終盤の展開、頼む続刊出してくれお願いだからという感じです。ちゃんと異世界やってるのにちゃんとご当地モノなんですよ、ラブコメとかで現実の街が舞台になることはあっても異世界モノで現実の街を舞台にするってどういう荒業ですか。面白いのですべてヨシ!!!!

 オーリン、魔力を使い果たすと標準語になるのが面白いです。津軽弁チート、今回も健在でした。あと温泉はよい。「ドサ?」「ユサ」という章があるのですがそんな長い文章を縮められる津軽弁すごい。

 

 いやあすごく面白かったです。イーホンくんが頑張ってくれたのできのう(2023/6/30)買ってきて、夜に半分くらい読んで面白くて寝付けなくてそれでも寝て四時半起きして読破してしまいました。サクサク読めてノンストレス!

 予告によると次の舞台は秋田県ことヴリコ(たぶんハタハタの卵ですね)だとか。美人のエルフが住んでるらしいです。これは秋田県民としてはぜったいに読みたいやつ……! 頼む続刊ちゃんと出て……!

 それから帯にはコミカライズの予告が載っていて、いやスニーカー文庫さんもっと大々的に広告してよと思ってしまいました。本当にもうちょっと広告してほしいです。実を言うと発売半月前まで新刊が出るって知らなかったんですよ。たまたま著者のツイッターを見て「2巻出るったが?!」となったくらいですから。

 

 面白かったです、オススメです!

オーバーロード(丸山くがね著)の話

 今回は一冊の感想ではなくシリーズの話をします。

 このブログにたびたび登場する叔父上が、オーバーロードのアニメにハマったのがきっかけで、原作の大判ライトノベルをコツコツと古本屋で集め始めて、読み終わったのを貸してくれたのですが、それでどうにか16巻まで読みました。

 いやあこれがめちゃめちゃに面白い。登場人物のみなさんはキャラクターがばっちり立っていて、世界観も精密に練りこんであるし、面白いライトノベルってこういうのを言うんだな……と思いましたです。

 個人的にはセバスが好きです。王国編での男前ぶりがすごかった。あとシャルティアがかわいい。アウラとマーレもかわいい。アルベドさんえっちだ……。

 なにより「サ終したゲームの世界に取り残されて、ゲームで手に入れた力やアイテムで無双する」という設定が上手いなあと思います。ゲームの世界で無双したい気持ち、たいへんよく分かるので……主人公アインズことモモンガこと鈴木悟は本当に「ユグドラシル」というゲームが好きだったんだなあと、昔の仲間たちのことを思い出しているシーンのたびに思います。

 そして鈴木悟はふつうのサラリーマンで、国家経営なんてしたことないのに、周りにお神輿みたいに持ち上げられて苦しみながら支配者をやっているというのが妙にリアルでいいと思います。頑張れ……という気持ちで読んでおります。守護者のみなさん、アインズがすごく頭のいい王様だと思い込んでいてアインズが言ったことを真に受けるので、アインズ苦労してるんだな……となります。

 

 一巻の発売が確か2011年くらいだったと奥付を見て確認してたんですが、もう10年以上続いているシリーズというのはやはりバケモノという感覚しかありません。しゅごい。イラストも充実していて表紙のクリーチャーだらけの絵を見るたびにすごいなあと思っています。

 最初のほうは暴れん坊将軍感強めなんですけど、だんだんアンデッドの王様らしく悪いことをする(リザードマンの村を襲うとか魔法で人間の軍隊をぐっちゃんぐっちゃんにするとか)のもなかなか面白いなあと思いつつ……この世界にプレイヤーはまだいるのか、いるとしたらどういうものなのか、というのが続きで描かれるのでしょうか。

 とりあえずこのブログにアマゾンを貼り付けたのを見るとまだ続きは出ていないようで、とても楽しみです。ありがとう叔父上!!!!

 大虐殺のシーンが連発するのは恐ろしいんですが、でもとても読みやすくて楽しいです。あと最後にフルカラーで登場人物が紹介されているのも好きです。なお人間のキャラクターだとネイアが好きです。クライムも好きなのですがあんなことになるとは……。

 とにかくめちゃめちゃ魅力的なお話です。スピンオフ漫画が出ているみたいなのでそれを読みたい。

 叔父上の貸してくれる本はとにかくハズレがないんですけど、小説を貸してもらうことはあまりなくて、叔父上のハマりぶりが想像できてとてもニコニコしてます。叔父上、人間ドックでなにか引っかかったらしくて、ちょっと心配です。

 

 面白いのでみんな読んで! わたしもあつ森世界に入って貯金の1700万ベルで無双したいぞ!!!!