めんどくさがりの自分の尻を叩く読書ブログ

読書は好きだ。だがめんどくさい。だけれど面白い本を読みたい。だから感想を書いて尻を叩くというブログ。

ソリッドステート・オーバーライド(江波光則著)の感想

 すんごいものを読んでしまった。

 ガガガ文庫はときどきラノベのガワで超ハードSFを出してくるから油断ならない。帯の虚淵玄さんの「もうラノベじゃなくてゴリゴリの本格SFじゃん。ガガガ文庫はハヤカワさんちのシマにカチコミかける気か?」っていうの、深く深く頷いてしまいました……。

 最初は買う予定はなかったのですが、ガガガの公式さんがなにやら盛り上がっていて、表紙の画像が流れてきて「アッこれは買いだ」となったやつです。サイボーグの女の子大好きすぎるでしょうよ。そしてそのサイボーグの女の子と旅をする二体のロボットがとても楽しそうで、ああこれは面白いSFラノベに違いない、と思ってイーホンくんでポチって、今月だけで4冊ガガガの本を買うことになっちったわけですが。

 このお話はロボットしかいない戦場を旅しながらロボットたちに体のパーツを届けつつラジオ配信をするロボット、マシューとガルシアが、人間の女の子マリアベルを拾って、彼女の家のある西に向かう……というお話です。そこだけだとのどかでラノベっぽいんですけど、ロボット誕生の経緯とかロボットを動かす「思考金属」とか、大統領の陰謀とか、とにかくすげえ世界観のお話でした。

 マシューはコメディアンのロボットで、ガルシアは格闘技選手のロボットなんですけど、二体は「衛生兵」であり「目を探そう」というところで意気投合して、戦場を旅しているのですが、マシューはよくしゃべるしガルシアは朴訥で事あるごとに「これがあればヴァルキリーに勝てた」と言います。ヴァルキリーというのはガルシアが格闘技選手だったころの対戦相手のことで、それはまあともかく。

 この世界のロボットは「見る」ことが禁止されていて、それもあって二体は「目」を探しているわけです。見ることが禁止された経緯は最初は「そんな理由!?」って思うんですけど、物語が進むにつれてもっと深い理由が分かるのが素晴らしいです。この世界のロボット三原則は「人にならねばならない」「人になってはならない」「何も見てはならない」の三つで、「人に~」の二つはロボットがロボットであることを保つための理由なのです。そのあたりが超ハードSFだったっす。

 そしてマリアベルがたった一人で戦場にいたのにも深い深い理由がありまして、ふつうならその状況は怖がるでしょうと思う状況でものんびりしている理由が恐ろしくてですね。そのあたりはぜひ読んでほしいです。

 大統領と原初のロボットのエピソードが大きな比重を占めているのも、ありがちなラノベではないよなあ……と思わされます。いやあ面白かった。すんげえハードSFでたいへん満足しました。こういうのが読みたかったんだよ……個人的にボルアリーアさんがすごく好きです。

 続きは出るのかな。マシューとガルシアとマリアベルののどかな旅、まだまだ読みたいのですが。お願いしますよガガガ文庫さん……!

 面白かったです、オススメです!

(ちなみにわたくし名作RPG「黄金の太陽クラスタでして、「マシュー」と「ガルシア」という名前に「んん!?」となりましたです。マシューのほうは海外版の名前ですけど……)