めんどくさがりの自分の尻を叩く読書ブログ

読書は好きだ。だがめんどくさい。だけれど面白い本を読みたい。だから感想を書いて尻を叩くというブログ。

かくて謀反の冬は去り(古河絶水著)の感想

 ものすごいものを読んだ……(放心している)。

 なるほど賞をとるわけですわ。納得です。逆にこのレベルでないと受賞できないと思うと「ひえええプレッシャー!!!!」となるわけですが、とにかくものすごかったです。

 まずは世界の様子が独特なんですよね。初めて錆喰いビスコを読んだときみたいな、いままで全く見たことのない世界が舞台でした。父王祖父王の肖像画がいわゆる「卑弥呼さまー!」の美豆良スタイルで登場人物の名前が古代日本風なのに、20世紀初頭くらいの文明程度に見える世の中で、全く見たことのない世界が舞台です。たいへんわくわくと読みました。

 宮廷陰謀ストーリーという、ライトノベルではなかなかなさそうなお話なのもよかったです。主人公の奇智彦(クシヒコ)は左半身が不自由な王家の末の王子なのですが、彼がまさに奇知で状況を切り抜けていくのは「おおお……!」と熱くなること必至です。

 表紙のファンタジーでかい女は荒良女(アラメ)といい、奇智彦に贈られた奴隷なのですが、彼女のストーリーへの絡み方がたいへんいいです。熊には人間の理屈は通らないのです。強い。カッコイイ。最高すぎる。

 2ページに一回くらいパワーワードのでてくるすごいお話だったので、ふせんを貼りながら読んだ結果角刈りの文庫本が出来上がりました。いやパワーワード多すぎるでしょ。破壊力抜群すぎる。

 宮廷陰謀モノですが実際の戦闘シーンはあまり出てきません。ナイトメアフレームに乗らないコードギアスとでも言えばよいのでしょうか。いやもっと緻密な感じがする。シェイクスピアのオマージュということなのでアニメより演劇舞台のほうが合うかもしれないなあ、と思いながら読みました。

 キャラクターだと石麿と幸月姫が好きです。石麿は奇智彦の従者で、ガタイと顔のいいバカです。いろんな人に奇智彦とボーイズがラブな関係なのかと疑われたり、その筋のひとにお尻を眺められたりするガタイと顔のいいバカです。本当に愛すべきおバカさんなのですが、終盤の奇智彦の命令で行動するシーンのカッコよさときたら。

 幸月姫はまだ小さい、奇智彦の姪っ子で王女さまです。かわいい。奇智彦にめちゃめちゃ懐いてて「くしさま」と言って膝の上に乗りたがります。彼女も最後の方の展開がすごいのでとにかく読んで確認してください。すごいっすよ。

 いやあすごいものを読んだ。これは傑作ですよ、確かに好き嫌いはありそうですが、わたしにはめちゃめちゃぶっ刺さりました。キャラクターがみんな魅力的だし、見たことのない世界を見せてもらいました。

 見たことのない世界を作り出す才能というのは稀有なものではないでしょうか。すごい。真似しようとしてできることじゃないっすよ。とにかく面白いからみんな読んでほしい。

 好きなライトノベルがまた増えました。ガガガ文庫は本当にいい本を作られるレーベルだ……いつかガガガか電撃からデビューしたいと願う人間としてはたいへん刺激になりました。

 すごく面白かったです! 激しくオススメです!