やべえ本読んじゃった。この書き出しめちゃめちゃ多いですけど毎度本当にやべえと思いながらブログを書いております。
柴田勝家先生の新刊であります。発売後しばらくしてから「なんか読んでみたいな……」と思ってうっかり買いました。で、大正解優勝でした。
なんというか読後感が初めて筒井康隆の小説を読んだときのようで、ひたすら面白かったです。ガッツリSF味のするたいへんおいしいSFでした。
では順番に見ていこうと思います。「オンライン福男」は、ポストコロナの時代にお正月の福男行事をオンラインでやるお話です。どんどんスケールが大きくなっていく展開はひたすら笑えます。登場するハンドルネームが本当にそれっぽくて笑いました。
次の「クランツマンの秘仏」は、柴田勝家節全開の感じでした。信仰が質量を持つ、という不思議なお話です。それを親子三代の研究者が論文にまとめた、という体裁なんですけど、本当にそういう研究している人がいそうでゾクゾクしました。
それから「絶滅の作法」はぐっと身近な印象なんですけど、よくよく考えたら宇宙人だし地球人滅んでるし、ぜんぜん身近じゃなかったですね……不思議なお話でした。この短編集ではかなり好きなやつです。星新一の香りがしました。
で、「火星環境下における宗教性原虫の適応と分布」はマジで論文のノリなんですけど、その真面目だけどいい意味で狂った文章から火星の文明とかを想像しちゃうやつです。マジでいい意味で狂っている……。
また「姫日記」は柴田勝家先生が学生時代に遊んだバグだらけの美少女戦国時代ゲームのプレイ日記なんですけど、起きるイベントがことごとくクソなのが笑えます。それを面白いと思えた柴田勝家先生すごい。でもそれを肯定することもある種の信仰と言えるのかもしれません。
最後に収録されている表題作「走馬灯のセトリは考えておいて」は、亡くなった人間の個性や趣味を基に作ったヴァーチャル存在が普及した世界で、その技術でかつて大人気ⅤTuberだったひとの死後にラストライブをする、というお話です。とにかくエモいから読んでほしい。エモの極みだから。読めば分かるから。というか読んで全人類。
いやあ面白かったっす。読みはじめたらもう夢中ですよ。すげえ作家だ……と思います。あと帯に書いてある「祝柴田勝家(武将)生誕500周年」というの、この本と関係あるんだろうか。
SFのコッテリ味のやつを摂取したぞというたいへんよい感想を持てる本でした。中学生のころ筒井康隆の本を本棚から探して片っ端から読んだときと同じ感想が出ました。傑作か? ああ傑作だよ!!!!
柴田勝家先生のデビュー作「ニルヤの島」は難しくて読めなかったんですけど、最近の作品は分かりやすい作品が多くて嬉しいです。「信仰」という大きなテーマがドーンとあるのがすごいところなんだよなあ、と思います。
みんな読もう。よいSFだぞ。面白かったです、オススメです!