ちょっとずつ読むつもりだったのに気がついたら一気読みしてました。
じわりと心温まるお話であり、登場人物の会話は切れ味鋭く、すさまじく面白い小説でした。
1巻で無事経営が軌道に乗ったおにぎり専門店バーベナに、店主である桜子さんの父親が現れます。桜子さんの父親は、桜子さんに売り上げの大幅UPが出来なかったらお店を潰す、と言ってきます。そして主人公である秋宗のほうも、畳んだ料理屋を再開しないかと言われる、端的に言っていろいろピンチな状態からお話は始まります。
秋宗はもちろんバーベナに残るわけですが、桜子さんの父親がとんでもない頑固、というか生真面目で不器用の塊みたいな人でして、そういう気質と仕事が忙しすぎたゆえに桜子さんを可愛がることができなかったことをずっと悔いている人なのです。桜子さんの父親は、桜子さんに安定した仕事をさせ苦労させないことが親の愛だと思っているわけです。
お話の随所に「独立」という展開が挟まってくるのは、サブタイトルのなかの「門出」というのがこの巻の大きなテーマだからなのだと思います。喫茶店親子の娘が遠くの大学に進学したい話とか、桜子さんが育てている夏樹くんが中学受験を希望する話とか。
夏樹くんはバーベナで働きたくて食品のことを学べるコースのある中学を希望するのですが、それに桜子さんはだめだと言います。それは桜子さんが父親に安定した職を望まれるのと同じなんですよね。でも子供というものは独立したり少しずつ親離れしていくもので。
最後のほうの展開は全てピシッとはまった作りで、ああこれはすごい……と思いました。靴底ってそういうことかー! と。
あと今回も文章がめちゃめちゃおいしいです。登場するおにぎりもおいしそうですし、それだけでなくそもそもの文章がすごく丁寧できれいで痺れます。
作中で食べてみたいのはやっぱりたこ焼き器で作る焼きおにぎりですかね……。切腹おにぎりもおいしそうでした。
切腹といえばちょいちょい戦国武将の名前が出てくるのが気になります。あと夏樹くんが友達から借りて読んでる児童書が完全につるみ先生が別名義で書かれている児童書ですごく笑いました。
あとがきを読むところによると、どうやらこのシリーズは完結で、しかもいままでの「家族のお話」にはピリオドを打たれるようです。これからバチバチの犯罪小説とか書かれるのかな。かなり過激でダークな同人誌を書かれたという話も聞いたことがあるので、そういう路線になったりするんでしょうか。はたまたガチの歴史小説を書かれるんでしょうか。
とにかくつるみ先生はツイッターで出会った素晴らしい先輩なので、これからも応援しようと思います。
面白かったです、オススメです!