めんどくさがりの自分の尻を叩く読書ブログ

読書は好きだ。だがめんどくさい。だけれど面白い本を読みたい。だから感想を書いて尻を叩くというブログ。

勇魚(C.W.ニコル著)の話

やべえ本を読んだ。

勇魚〈上〉 (文春文庫)

勇魚〈上〉 (文春文庫)

 
勇魚〈下〉 (文春文庫)

勇魚〈下〉 (文春文庫)

 

これ本当に面白かったです。

C.W.ニコルの本は冒険家になりたかった小学生のころにエッセイを読みあさってたんですが、こういう「大人向け」の小説を読むのは初めてでした。

すごく壮大かつ大地と海に根差した時代小説でした。これ本当にイギリス人が書いたん……?訳がうますぎるのか……?

鯨捕りの村の若者、甚助が鮫に襲われ片腕を失い、侍にして学者の定頼に声をかけられて密偵となり、そこからさらにアメリカの捕鯨船の船長となる、というのがあらすじなんですが、それが多層構造になってていろいろなひとの目線で描かれます。侍の定頼や、横浜の外国人居留区に住む裕福な貿易商の若者ライアル、とにかくみんなリアリティがすごい。あと伊藤という薩摩藩士がずっともすもす言ってるの、西郷どんで履修したやつー!!てなりました。

 

で。

最後まで読み終えたときの爽快感がヤバかったんですよ。

主人公の甚助はジム・スカイと名を変え、アメリカの国籍をとり外国人の女性と結婚するんですけど、最後の数ページを書くためにこの物語があったのでは、というビターっとハマったラストなんですよ。素晴らしく美しい。

しかし一方で「なんか旧約聖書にこういう話あったな」と思ってしまうなど。

でも幕末の動乱と世界情勢をリアルに描いた物語でした。これそのまま大河ドラマにできるやつやん。映画でもいいし。

 

それから鯨捕りの人々の暮らしを描いた部分がとてもよかったです。わたくし鯨は子供のころ食べさせられて「二度と食べない」と思うほどおいしくなかったんですが、しかしこの物語に出てくる鯨の刺身がおいしそうでして。C.W.ニコルのエッセイにもよく鯨料理とかシロイルカの肉の話が出てきてこれがまたおいしそうなんですよ……。

新鮮なやつだと違うのかなあ。

 

あと、C.W.ニコルの著作はエッセイと児童書を主に読んでいたので、ガチの濡れ場が出てきてびっくりしました。文学の感想において、んなこといちいち書くのもアレですけど、マジでびっくりしたんですよね……。

 

とにかく勇魚、すごく面白かったです。映画化してほしいなあ。日本の歴史や文化について深い研究がないと書けないやつだ。古い本の帯に「八年前、C.W.ニコルは「勇魚」を書くために日本に来た」とあって「わかりみ……」となりました。

 

C.W.ニコルのフルネームがクライヴ・ウィリアム・ニコルだということを知ったの、亡くなったあとだったんですよね。何年か前に嵐にしやがれではちみつおじさんやってるのを見たのが、唯一動いているニコルさんを見た記憶です。

ニコルさんのようにたくさんの冒険をしていろんなことを蓄積して、それで書かれたエッセイなら面白いに決まってますよね。わたしも頑張ります。