ナウシカの考察をしたいと言ったな。したかったけど読み始めたらしんどすぎて(絵が物理的に殴ってくる感)またこんどになった。
というわけで「ライトじゃないノベルを読もう月間」二発目は荻原浩の「逢魔が時に会いましょう」です。
将棋エッセイの編集者さんに勧められて読んだのですが、とても面白かったです。てかこれライト文芸だよね??怖くない裏世界ピクニックだよね??百合じゃないけど……。
まずは正直に布目先生がドツボでした。めんどくさい、話すと長い、でも頭はいい。そういう二次元の男マジでSUKI……。
生活力なさそうなのすごくいい。飛行機怖いとか可愛すぎかよ。こういう男リアルにいたら死ぬほど面倒だけど二次元だから許す。
あと真矢さん強い。本当にお前ら結婚しちゃえよ。真矢さんのお父さんじゃないけど布目先生は責任を取るべきだと(なんの責任だ)。
この本を読んでいちばんすごいと思ったのはレトリックの豊かさでした。
『「馬……」と前半の一文字が口から零れてしまってから、相手が准教授であることを思い出して、続いて飛び出そうとした鹿を檻へ戻す』
どうすればこういうレトリック出てくるんですかね??
レトリックの力がすごすぎて「これが小説……!!」ってなりました。なるほど編集者さんに勧められるわけです(レトリック貧弱ライターなので)。
座敷わらしや河童や天狗を巡るストーリー三本立てなのですが、座敷わらしの写真を撮ったらメモリーカードの中身が消えてたとか、河童は間引かれた子供の水死体なのではないかとか、妖怪の描写が圧倒的でして。
河童の出る沼に顔出しパネルがあってインスタ女子が群がってるのを「映えんぞここでは」と思う真矢さんつよい。河童かと思ったらカミツキガメだった、でも実は、というストーリーすごい。
しかし布目先生について、作中の真矢さん以外の女はおしなべてカッコイイと思ってるのがなかなかよいw真矢さんの感覚ではかっこよくないのですが、布目先生すごく魅力的だと思うんですよね。
その真矢さんもなかなか変わった人で、映画研究会でガチで映画を作りたいと思ってたらみんなファッションだったので大学院に進んで何がなんでも映画を撮る、という熱狂的映画クラスタでして、ものの食べ方とかまるっきし男なんですよね。スタミナ定食を食べたがったり。
大学院に行くと言ったら父親に仕送りを打ち切られてしまい、日当につられて布目先生の研究に付き合うことになるのですが、もうお前ら結婚しちゃえよ……。
布目先生、真矢さんの実家の近くに来たときうっかり真矢さんのお父さんに挨拶しに行くのですが、挨拶ってそら誤解されるよ……真矢さんのお父さんもなかなか古いタイプの「父親」で、研究費を浮かすために宿で同じ部屋を使った話をしたら「責任を取れ」となるという。布目先生多分そういうことあんま興味ないんじゃないかな……。
とにかく布目先生かわいいんですよ。うっかり真矢さんのお父さんに向かって真矢さんのことを「シンヤさん」と言ってしまって殴られてしまうとか。
でも布目先生妖怪の考察だけは鋭いんですよね。こういう頭でっかち男、リアルにいたら関わりたくないけど二次元で見る分には最高ですね。
というわけでとても面白かったです。編集者さんに荻原浩の他の作品も勧められたので読んでみようと思います。