めんどくさがりの自分の尻を叩く読書ブログ

読書は好きだ。だがめんどくさい。だけれど面白い本を読みたい。だから感想を書いて尻を叩くというブログ。

錆喰いビスコのテセチロが尊い!!!

なんの話だと仰る向きもあるかと思いますが、テセチロはいいぞ。

テセって誰だという話になりそうですが、電撃文庫マガジン2019年三月号に掲載された錆喰いビスコの番外編「万霊寺の放蕩娘」のキャラクターです。名前は出ていませんでしたが、一巻のカクヨム掲載ぶんのスピンオフに、美貌の大僧正弟子として登場していると思われます。

テセはチロルの実家である万霊寺の、大茶釜大僧正の「影」です。大僧正が亡くなれば一緒に死ぬ運命の若者で、若いながらとても力のある僧侶でもあります。

たぶんテセという名前はギリシャ神話のテセウスから来ているのではと思っているのですがそれはともかく。

短編の内容は、病気になってしまった大茶釜大僧正を、万霊寺に戻ってきたチロルが治し方を知っているといいテセとちょっと冒険してくる、というもので、チロルが万霊寺を出て行った十年前の様子も挟まります。どうやら、十年前からテセはチロルを想って(もちろん無自覚に)いたようなのですが、テセは万霊寺に残ることを選びます。

テセはおそらくチロルより年下なのでしょうね、テセがいまの大茶釜大僧正と同じ症状で寺に運び込まれてきたときのことをチロルは覚えていて、その治療に使う薬草を取りに行くのです。

 

さて、ここで大事なことがあります。

錆喰いビスコ三巻で、チロルの初恋について赤チロルが語るシーンがあります。ごくごく短いですが、「初恋は十一歳、その時ろくでもない男に引っかかり、そいつがくらげ嫌いだったからくらげ髪をしてる」というものです。

 

テセじゃないんですよ。

テ セ じ ゃ な い ん で す よ ! !

えっ、てことはテセはひたすらチロルの幸せを祈るだけで、チロルに対して何らかの具体的な行動をとったりはしなかった、ということですか。

テセが出て行くチロルに言ったのは「友達を作ってほしい」ということだけで、「友達」を作ってほしいということは「友達」より親しくなりたい、とテセはどこかで思っていたのではないでしょうか。あるいはテセは、チロルの友達でいられない己のぶんまで、誰かにチロルを大事にしてほしいと思っていた、そういうことでしょうか……。

 

ね、テセチロ尊いでしょ……?泣き顔の絵文字いくら貼っても足りないっすよ……。

この短編の見どころは、テセとチロルが小さな冒険(ぜんぜん小さくないけど)をする、楽しそうな(死にかけるけど)姿だと思います。

それだけでなく、錆喰いビスコ世界の僧侶は修行で目をこじ開ける(物理)とか、そのこじ開け器具にピンクの可愛いやつがあるとか、ツイッターで著者の瘤久保慎司先生がいうままに「オワーッ!」ってセリフが出てくるとか、色々ツッコミどころがあってとてもよいのです。

錆喰いビスコの本編が好きなら電撃文庫マガジンの錆ビス短編はどれも面白いかと思います。あと、電撃文庫マガジンの作家エッセイコーナーの瘤久保先生による世紀末食レポも楽しいので、ぜひ読んでいただきたい……。

 

ツイッターで「錆喰いビスコ一巻冒頭は勧進帳」というツイートを見てなるほど確かにと思ったのですが、錆喰いビスコ、分解したらまだまだいろんなエキスが混ざってそうでドキワクしています。

電撃文庫マガジンに載った短編、短編集みたいな感じで出ないかなあ。テセのエピソードの載った号の前のやつも、チロルのガメツさが最高だったんですよね。

奇しくもきょうはバレンタインデーでして、チロルの話をするのにもってこいでした。みんな、錆ビス本編読んだら電撃文庫マガジンも読もうな……!!