エッセイの編集者さんに勧められて読んだシリーズです。
文庫も出てたんですね。ハードカバーを図書館で借りて読みました。
まずは出だしがずっしりと重い。死にかけてるブラック労働の男の人が主人公なのですが、彼から見える世界が重いのです……。
精神病持ちにはとても理解できる世界観。死んじゃいたいけどそれは生きたいから(という内容であると直接の描写はありませんがそう私は察しました)……むごい、むごすぎる。
主人公が食事をとるために近所のお社のお祭りにいくと金魚すくいの出店があって、主人公はいちばん大きなリュウキンを取れなかったら死んでしまおうと考えます。そしてリュウキンをすくいます。
そしてリュウキンを飼う設備を用意するのですけど、もう誰か、待っていてくれる誰かのために何かするということは彼にとってとても良かったようで、そこでもう回復の兆しは見えているのかなと思うのですが、そのリュウキンはたくさんの記憶につらなる、中国から琉球を通って長崎にたどり着いた女の子なのです。
主人公は彼女にリュウという名前をつけます。そして、作品の途中途中に、リュウが復讐をしてきたことが挟まります。リュウは金魚文化が始まった1700年前に許嫁を殺されていたのです。
リュウが人になって出てくる描写が面白いんですよね。濡れてるw
リュウはテレビとえびせんが好きで、エビのパスタも「ミミズみたいで」好きなんですよね。くせ強めのヒロインです。テレビでやってたCMを真似してみたり可愛いです。
リュウの出現とほぼ同時に、主人公は「死んだ人が見える」特異体質になります。主人公の仕事は仏壇のセールスマンなのですが、死んだ人が見えることによって仕事をどんどん成功させます。
リュウが病気になったり主人公の別れた彼女がやってきたと思ったら死んでいたりとか、どんどん大変な事件が起きるのもいいです。事件は次々と起こすに限りますね。
これもまたレトリックがいいのです。金魚のリュウが桶の中にいる描写として「小さな赤い火が灯っていた」とか。レトリック貧弱ライターとしてはどうしてこんなレトリックを思いつくのだろうかと思いますよね……。
主人公の会社に長崎支店が出来ることになり、主人公は長崎支店に行くことにします。
それはリュウに昔のことを思い出してもらう旅行でもありました。もうこの辺りの主人公は病んでる感じがないんですよね。一緒に暮らす人がいるって大事だなあと。
最後にかけてのシーンは果てしなく心が辛い感情が尊い、という感じで、リュウの目的が分かるシーンの悲しさがやばいです。
エピローグにあたるエピソードでリュウと主人公のその後が描かれていて、主人公がブラック企業をやめられたことにまずは安堵しました。
ホントにレトリックとか細かい描写がやばいんですよ、リュウはふだん大昔の中国の服を着ていてそれは真っ赤なのですが、人間の前に出るときは主人公が服を買い与えたのを着ていて、その格好のまま金魚にもどると服の色がそのまま金魚の色になっちゃう描写がおもしろいです。
リュウがとにかく魅力的で、ヒロインが可愛いって大事だな……などと思います。とてもいいヒロインです。現代文明に触れてどんどんヘンテコになっていくのがおかしいw
リュウを長崎旅行でホテルにおいといたら有料チャンネルのアダルトビデオを観ていたとか、レストランに入ってメニューを渡したら最初のページに頭のついた魚料理が載っててぶん投げるとか。
いやあ編集者さんに勧められて読んだのですが、たまらん面白かったです。
荻原浩という作家は知らなかったのですが、気になる作家になりました。
次は何を読もうかな〜。