えっと、錆喰いビスコの三巻を読み返したのですけど、なんでかってと初見のとき「やべー!すげー!やべー!」だけで読んでしまって、細かいとこを見落としてたなあと。
ちょうど一巻二巻の限定新装版のニュースもありましたし、錆喰いビスコ第一部の最後にあたる三巻の話をしようと思います。
いきなりラストからなんですけど、過去と死の象徴である錆に未来と生命の象徴であるキノコが打ち勝ったのは、まさしくこのストーリーの始まりの終わりだったと思うんですよね。
ジャビやパウーがサビツキに侵されて、それを助けようとビスコとミロが行動を起こすのがこの物語の始まり(一巻)なわけですけど、この時点では錆は抗いようのない過去だったわけです。ビスコたちが錆喰いを手に入れて、ジャビやパウー、日本じゅうのサビツキ患者を救うわけなのですが、まだ二人の生命が錆に打ち勝ったわけではないのです。
二巻でミロは真言を操る技術を手に入れます。その真言は二巻時点では明らかになりませんが、三巻で分かるのは、真言は錆の元凶テツジンを作った人間であるアポロから分かたれた感情、ホープが作り出したもので、錆であるアポロ粒子に対抗する「未来の」技術でした。
さあ、ここまで見えたらあとは錆の始まりである過去と、ビスコとミロという二つの未来のぶつかり合いなわけです。なんという王道の展開。完璧。
死しかもたらさない過去に打ち勝つ未来の生命、なんて熱い設定どうすれば組めるんですか。あとがきに「チラシの裏に書いた」ってありますけど瘤久保先生何者なの……。
一巻初見で「カニに乗って旅ってどういうこっちゃ」ってなった一見奇抜な設定も、アクタガワが喋れない動物なことに意味があるのですよね。アクタガワがQBみたいに喋ったら、あの山手線との死闘は描けなかったと思いますし、喋らないアクタガワが山手線と戦う姿は地の文で描写された最高の熱血シーンだったと思います。
アクタガワが喋らないから、一巻でミロがアクタガワに乗るのに苦労するシーンもあるわけですし。やっぱりアクタガワは三人目の主人公なのですね。四巻、ラノベ初の表紙がカニなるか。いやなにを期待してるんだ。
あと細かい台詞回しやシーン描写が絶妙だと思います。「コボちゃん」とか「6チャンネル観られなくなる」とか「納期」とか。キノコ守りの子供たちが黒革コレクションのアニメに夢中になってるとか。
パウーの重過ぎる愛とかビスコのアホの子なところとか、細かいところまでかっちり描かれていて、しかもそういう細かい部分が邪魔にならないのがすごいのです。むしろめっちゃいい味出してる、すごい。
はー……錆喰いビスコすんげえなや……。
傑作ってこういうのを言うんだろうなあ。三巻までの構想だったとあとがきにありましたが、同じくあとがきに「新しい世界に二人を遊ばせることができるのは非常に嬉しく、彼らがまたどんな表情を見せてくれるのか、僕自身も楽しみである」と瘤久保先生の言葉があるのがただただわたしも楽しみです。
四巻は7月だそうです。期待!
来月から水曜は読書の日にしようかなと思っています、わかんないけど。
もっとモリモリ本読むぞー。