めんどくさがりの自分の尻を叩く読書ブログ

読書は好きだ。だがめんどくさい。だけれど面白い本を読みたい。だから感想を書いて尻を叩くというブログ。

アメリカン・ブッダ(柴田勝家著)の感想

はい。先月まるで本を読めなかった反省の金澤であります。

きょうはこれ。

アメリカン・ブッダ (ハヤカワ文庫JA)

アメリカン・ブッダ (ハヤカワ文庫JA)

 

図書館で借りて読んだんですけど、普通に本棚に欲しくなる本でした。面白かったです。

これは短編集でして、テイストの違う民俗学とSFを融合させた短編を収録した、めちゃめちゃに面白い本でした。

 

最初の「雲南省スー族におけるVR技術の使用例」という短編、ずっと気になっていたんですがようやく読めました。なんだこれ傑作か。

学術論文みたいなタイトルですけど、どこまで想像を膨らませたらこんなものが書けるのか。ショッキングです。

 

次の「鏡石異譚」は一見ファンタジックですがちょっと怖いお話でした。現実と嘘の記憶の交わる世界、興味深かったです。

 

「邪義の壁」はい大好物のやつキター!!気持ち悪すぎておぞましすぎてたまらないやつキター!!って感じでした。

懐かしのライトノベル 「MISSING」が好きだった中学生のわたしに「未来にもこんな面白い本があるよ」と教えてあげたい。最高でした。

 

「一八九七年:龍動幕の内」は、「ヒト夜の永い夢」の前日譚ですね。南方熊楠相変わらずクレイジーだ。若いころからこれならあれは仕方ないな……となるやつ。

すごく楽しいお話でした。カラクリはこういうことかあー!と分かると嬉しいです。

 

「検疫官」これもシビれました。なにこれすごい。物語が禁止の国の空港が舞台で、ちょっと海外の空港税関を取材した番組を思い出しました。

物語にハマってしまったひとが病院送りにされるとかなかなか恐ろしい話で、物語から国を守るはずだった主人公は空港に足止めされている少年がきっかけでおかしくなっていく……というお話です。ラストがすごいです。

 

表題作「アメリカン・ブッダ」これも凄まじい。ネイティブアメリカン風に解釈されたお釈迦様の物語を「ミラクルマン」というネイティブアメリカンの若者が語るんですが、それを凄まじい速さで時間の流れる世界にいる主人公が聴いている……というわけのわからない(盛大に褒めてる)話です。

そこでそれ出す?!完璧じゃね?!となる展開で、仏教をちょっとかじって弥勒菩薩のこととか知っておくといいと思います。素晴らしかった。

 

で。

この本、解説(池澤春菜さん)ですげー笑いました。

柴田勝家先生の本名が可愛いとか柴田勝家先生がメイド喫茶で塩対応されながら原稿書いてるとか柴田勝家先生がドジっ子だとか、ひたすら笑えました。

想像してください。メイド喫茶でSF書く戦国武将を。なんじゃそりゃってなりませんか。そんなカオスな世界からこのカオスは生まれているんですね、それは当然かもしれない。原稿の合間にオムライスとか頼んだりするんでしょうか。萌え萌えきゅんとかやるんでしょうか。戦国武将が。戦国武将にしてSF作家が。

 

とにかくトッポ並みにギッシリ詰まった短編集でした。面白かったです!