めんどくさがりの自分の尻を叩く読書ブログ

読書は好きだ。だがめんどくさい。だけれど面白い本を読みたい。だから感想を書いて尻を叩くというブログ。

プリニウス10巻(ヤマザキマリ/とり・みき著)の感想

やべえものを読んだ。

なんですかこれやばくないですか。あ、電書になってますが例によって紙の本で買いました。

 

フワワのくだりがやべえです。フワワというのはプリニウスご一行を案内した森の老人が教えてくれた森の神様です。フワちゃんではありません。

こいつがですね、森の老人の説明によると完全にもののけ姫のシシ神、ダイダラボッチスタイルでして、うねうねした巨大な神様で森を傷つけるものを許さない……という、巻末の対談を読むところによると「エコロジーな神様」です。

こういう想像上のものをいきいきと描く漫画という素晴らしいメディアよ。そしてプリニウスが意外と武闘派。

そこからプリニウスご一行はパルミュラに向かいます。パルミュラはシルクロードの街で、雑多な人種が集まっていて、平たい顔の東洋人も少なからずいます。顔が平たいって感想完全に日本人を初めて見たルシウスじゃないのw

民族による価値観の違いがいろいろ見えて、こういう多様な文化や価値観を許容していたパルミュラという都市があったというのは興味深いです。

ブレミュアエ人のくだりが面白いです。怪物や神様のイメージも収斂進化するんですね。

そして仏教を信じるギリシャ人の僧侶、ミステリアスでとてもよいです。ガンダーラ

 

で、ローマではネロが大変でした。ネロは国民に愛されていると信じて空回りしていて、目も当てられないくらい死相が浮かんでいます。国民は怒り、宮廷は陰謀で満ちていて、ネロはどんどん追い詰められていきます……。

オウムのアケロンの見開きはショッキングでした、ここはぜひ読んでほしい。ネロのいままでやってきたことが全てブーメランしてきます。驚愕。恐怖。ネロじゃなくてもこんなんされたら怖いわ。

ネロは芸術家として生きたかったのでしょうね、皇帝という立場でなかったらもうちょっと幸せな人生を送れたんじゃないでしょうか。

どんどん狂いどんどん追い詰められる哀れなネロ、勝手にイメージしていた「暴君」とか「ジャイアンリサイタル」とは随分違っていて、その最期は実に悲しい。この漫画のエンジンの一つであるローマ宮廷がこれからどうなるのか、歴史に詳しくないのでよくわからないのですけど、新章突入に期待します。

 

それからローマでは口のきけない娼婦プラウティナがプリシラという名前で幸せに暮らしている様子が描かれていました。彼女が笑うシーンがあってとてもよかったのですが、彼女の子供はやっぱり巻末対談からみるにネロの御落胤なんですよね……。どう展開するんだろう……。

プリシラは最初すごくかわいそうだったので、これからは幸せに生きてほしいです。

 

読んだ瞬間次巻が楽しみなやつでした。10巻まで出るマンガってすごいっすよ。そして新章突入期待しかない。

ツイッターでいわゆる大プリニウスもそろそろお亡くなりになるという話を見てしまったのですが、小プリニウスも描くんですかね?楽しみです。なにかでプリニウスは元祖「嵐の日に水路見に行くおじさん」だと聞いたのでどういう最期になるのでしょうか……。

 

明日はななつま4読むぞう。