はい。
LINEノベルで横書きのを読んだのですが、あらためて縦書きで読んでみると印象が違って面白かったです。
つるみ先生はスポーツものを書かれるととても面白いのですが、採点競技のフィギュアスケートってどうなんだろと思ってたんですよね。わたしの父がスポーツ観戦大好きマンなのにフィギュアスケートだけは見なかったりして、わたし自身あんまり「大好き!」って感じではなかったりしますし。
で、まずLINEノベルで読んだときに、ああこれぞスポーツライト文芸だ……!って思ったんですよ。採点競技かどうかとかは関係なかったです。猫に出雲の阿国が取り憑いて主人公の朋時と愛花をコーチするというすごい展開なんですけど、登場人物がイキイキしていて、朋時が実力を発揮できない理由が切なくて。
前にも書いたかと思いますが、つるみ先生は「得意なのにできない」とか「大好きなのに苦手」みたいなシチュエーションをよく書かれるなあと思います。
日本酒BAR「四季」春夏冬中 さくら薫る折々の酒 (メディアワークス文庫)
- 作者: つるみ犬丸
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2016/04/23
- メディア: 文庫
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このシリーズの主人公は酒蔵に生まれた下戸で、誰よりも酒の味が分かるのに飲むと具合を悪くするんですよね。
「出雲の阿国は銀盤に舞う」の主人公の朋時は、スケートの才能はたしかにあるのに、極度のあがり症をかかえていて、それでペアを組む愛花をリフトで落として怪我をさせてしまった、指導者である父親にも見限られた、という過去があります。
阿国は色々な方法で二人を指導するのですが、それがどれもキテレツでして。個人的に好きなのは朋時に戦隊ヒーローのレッドの全身タイツ衣装を着せて駅前で踊らせるというあがり症克服作戦です。
で、アイスダンスのほうはラストまで手に汗握るハラハラの戦いが続くのですが、アイスダンスのライバルである得宗兄妹のエピソードもすごく素敵なのです……。
最後まで最大の敵が主人公の父なのも、乗り越えていく物語という感じがして好きです。最後まで読んだ時の充実感がすごいです。
あと個人的に藪中先生が好きです。人間のクズ扱いをされているw
阿国も面白いんですよ、乗り移った猫が雄猫だったり、通販で大量にチー鱈買ったり、朋時と愛花が無言の行を破るのを阻止するためにあたかも虐待されているかのような写真を捏造して、その時点で既にSNSのフォロワーが万単位だったり。
あとパチンコ打ちに行くんですよ、猫なのに。作中では「パチンコを打ちに行った」としか出てきませんが、阿国がパチンコを打ちにいくおまけ小説はLINEノベルのつるみ先生のアカウントで読めるよ!(宣伝)
いやはや実に面白かったです。交錯する人間ドラマの充実感がすごい。
物語最後の演技を、ストーリー仕立てで、しかも阿国の生きていた時代を舞台に描いたのは凄すぎて語彙が滅びます。プロの作家やべえと思いますよね(レトリック貧弱ライターなので……)。
またつるみ先生スポーツもの書いてほしいなあ。つるみ先生のスポーツものは時々偉人や武将が現代人として出てくるのが面白いんですよね。別名義の戦国ベースボールしかり。
この作品に影響されて考えたのが、ここのところ相撲を見ていて、チンギスハンがモンゴル力士に転生して新弟子検査を受ける話とか面白そうとか考えてて……ライバルはナポレオンが転生したヨーロッパ力士、みたいなやつw
こういう発想が湧くから読書は楽しいのですよね。でもチンギスハンがモンゴル力士になる話はたぶん書かないですがw
さて、次は何を読もうかな。今月まだ二冊しか本読めてないよ大ピンチ!!