はい、久々に読書の話です。(これは何ブログだ)
きょうはコレです。
これね、昔「なにこれ面白そう」と本棚から引っ張り出してみたものの、当時のよわよわ読書力では最初の短編も読み切れなかったんですよね。
きょう改めて読んでみたらめちゃくちゃ面白くてビックリしました。昔読めなかった本が読めるなんて体験久しぶりだよ……。
12作の短編で出来ているのですけど、どれもとても面白くて、クスッと笑うような、でも物悲しいような、不思議な気分にさせられました。
特に好きだった作品について感想を書こうと思います。
・女の決闘
団地の近くに自動車教習所ができて奥さんたちの見栄っ張り対決が始まるお話です。
見栄の張り合いがとにかくすごい。人間ここまで見栄の張り合いができるのか。リアリティがあるので実際の出来事みたいに読んじゃいますよね……。
今までいちばん団地でいい暮らしをしていたのに、夫がフランス帰りだとかいう家族が来て、でも自分の夫は屁をひるばかり。シュークリームの作り方だのなんだのの話をして仲良くしているように見せて中身は互いに嫉妬でメラメラ。
人間て罪深いすね……そしてその夫がフランス帰りの山川夫人は、団地の近くに立った自動車教習所に通い始めます。主人公の清子も、負けじと自動車教習所に通い、なんとか山川夫人より先に免許を、車を手に入れようとします。そしてその二人を焚きつけていた塩見夫人が実は……という話です。
この時代自動車ってめっちゃ高いっすよね???教習所だってどうしても必要でなければ女の行くとこじゃないっすよね???
人間の虚しさみたいなのを感じて切ないんですよね、これ……。
塩見夫人のやり方があまりに巧妙すぎて変な笑い出ますよね……オチが幼稚園の子供の語ること、というのも味わい深いです。
・俺とそっくりな男が……
すごいんですこれ。超はちゃめちゃ。自分にそっくりな、双子レベルで似ている人物が、自分のことを知ってどんどん自分の名前を使ってくる。なんだこのむちゃくちゃな展開。
しかもその似ている人物がイボがあるだのインキンタムシだの、まあせつない。極めつきは似ている人物が大臣の子供を誘拐します。
しかしその誘拐には目的があり、主人公はいつしかそのそっくりさんを応援し始めてしまいます。人間ってあやういですね……。
なんというか、この作品集は人の哀しい部分をユーモラスに描いていて、そこがすごくいいです。この短編もそっくりさんにムカつきながら、だんだん愛着が湧いて応援してしまうという哀しみがあって、笑えるんですけどせつないです。
・軽井沢
これも最初に上げた「女の決闘」みたいな、人間の見栄の哀しさを描いた作品……ということでいいのかな。
知り合いに軽井沢の別荘を貸してもらったらとんだボロ屋だった上に見ず知らずの大学生たちが転がり込んでくるし、妻とプールに出かければ妻の安い化繊の水着はスケスケになってしまうし、しかも大学生たちはレポートを書くためと言って遊びに出かけるのに主人公を引きずり回す。
これもラストがよいのです。うへえ……って感じで。
軽井沢に集まる人間を旧軽井沢族と新軽井沢族に分類した大学生たちの説明が面白い。そして大学生たちは更に酷いことをして帰っていく……。
大学生たちもひどいですけど、事の発端は主人公が軽井沢で避暑をしたいと思うことなんですよね。
「ごきげんよう」の世界の哀しみです。決して、立派に見えて裕福に見えるひとが幸せとは限らない。
さて、とても面白く読んだわけですが、紹介しなかった作品もとても面白かったので是非読んでみてください。ライトノベルみたいにキャラクターやストーリーを面白がるのでなく、深い人間性をしみじみ感じながら読むやつです。人間の滑稽さが詰まっている。
今月はもうちょっとライトじゃない小説を読もうと思っています。「夏のライトじゃないノベル月間」といった感じですね。
楽しいな〜!!