いやはやまたすっごいものを読んでしまった。
ヒトの時代は終わったけれど、それでもお腹は減りますか?(2) (電撃文庫)
- 作者: 新八角
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2019/07/08
- メディア: Kindle版
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これです。アマゾンのリンクはKindle版とありますが、昔ながらの紙媒体最強論者であるわたしは紙の本で読みました。
〈注意〉以下ちょっとネタバレ含みます。
なんだこれ可愛さの皮を被ったハードSFじゃないか(絶賛してる)。
1巻以上の超ハードSFでした。難しめな要素も含みつつ、わかりやすくサクサク読める、ライトノベルでハードSFやるならこういうのがいいなあと思う感じです。
どこかメルヘンな雰囲気もありつつ、やってることはハードSF。そしてハードSFのあとは「おいしー!」が待っている。
1巻でめっちゃカッコ良かったヤシギ姐さんがせつない。エルフさんがせつない。鰐鯨もせつない。
鰐鯨めっちゃかわいそうなんです。蛇口とか取り付けられてコクピットを埋められて、生体潜水艦にされてるんです。いやその蛇口から乳とってアイス作って食べちゃうんですが。
スライムも料理するんですけどスライムも科学的に考えられた食材でした。決して半端な異世界とかに逃げないで科学的根拠を持った存在としてスライムが出てくるのすごくないですか。
あとフェイスハガーも料理してました。おいしいのかな……フェイスハガーちらし寿司……。
今回はリコとウカの出会いがフォーカスされていました。
ウカは何百年も、宇宙からラジオのお料理番組を放送し、孤独に菌の王国を育てていた、ってだけでもうせつなくないですか。
ウカは本当に料理しかできないし戦えないしひ弱な存在ですけど、その人工的な生い立ちとは裏腹に「心」があるんですよね。
それは新登場のオラトールちゃんも一緒で、ウカを奪い取ろうとする一方確実に心があるのです。リコの「一緒に笑って、話をして、飯を食いたいか?」という問いかけに「あなたたちを……信じたい」と答えるわけですから。
人間の心をじわじわ描いた、とてもよいシーンだと思います。
オラトールちゃんは鰐鯨とともにいた幸せな時間を忘れていなかった、というのもとてもよいです。
ウカのラジオを聴いていたエルフさんが「失恋」と気持ちを表現したのも良かったんですよね。人間と違う作りの思考形態を持つエルフさんたちも、人に恋ができるのだなあと。
そして最後のエピソードの「料理は食べてくれる人がいて完成」という話。安っぽい言い方で片付けたくないのですが「尊みがすごすぎて尊い」となりました。
ウカリコいい……百合ポストアポカリプスSFクッキングというカオスな世界がやみつきになる……!
というわけで素晴らしく面白かったです。今回も伏線がすさまじかった。1巻より2巻の方が好きかも。
さて、部屋の「追ってるライトノベルのコーナー」がぎゅうぎゅうになってきたぞ。どうしよ。