めんどくさがりの自分の尻を叩く読書ブログ

読書は好きだ。だがめんどくさい。だけれど面白い本を読みたい。だから感想を書いて尻を叩くというブログ。

これは学園ラブコメです。(草野原々著)の話

すごいものを読んでしまった……。

これは学園ラブコメです。 (ガガガ文庫)

これは学園ラブコメです。 (ガガガ文庫)

 

これです。

なにがすごいって活字で出来ることの限界に挑んでいる……凄すぎて大笑いしつつも内心(なんだこれ……やべえ……)と戦慄していましたです。

だって学園ラブコメ世界にファンタジーとかSFとかホラーとかミステリが侵略してくるんすよ……比喩ではなく地の文に……。ハチャメチャな展開から突然「読者への挑戦状」とか出てくるんですよ……サクラテツも真っ青だよ……

 

筒井康隆直木賞候補に挙がったとき、選考委員が「賞は小説と呼べるものに与えたい」だったかな、そんなことを言って落としたという話を聞いたことがあります。

この「これは学園ラブコメです。」を読んだときそれが頭をよぎりました。果たしてこれはラノベなのかと。実験文学ではないかと。

ですが、カオス極まりない世界でありながら、ストーリーは王道のラノベだと思うのですよね。

もちろん実験的だし普通のライトノベルではありえない展開の連続で出来ているのですけど、作中で解説された三幕展開をきちんと踏襲した、読みやすくて明るいストーリーなんですよね。

まどかさんのムチャブリ加減のすさまじさがすごい。迫り来る「なんでもあり」に立ち向かうべく伏せ字にされたライトノベルのタイトルをポイポイ投げるシーンはとにかくおかしい。

あとホラーとSFが地の文で戦うとことか展開の都合でキャラクターの個性がめっちゃ盛られるとことかひたすらおかしい。突如あとがきが始まるのも笑える。

 

これは小説でしかできないことを極めている……コミカライズも映像化も完全に不可能だと思います。漫画もアニメも「地の文」がないからです。

ライトノベルってえてして地の文が軽んじられがちですけど、地の文を活かしてこんなすごいものが書けるのかあと驚きました。

好きずきは分かれそうですが間違いなく傑作だと思います。

 

素子ちゃんの「学園ラブコメの幼馴染」感とか、モモちゃんの「学園ラブコメのお嬢様」感とか、レムちゃんの「学園ラブコメの中性的読書少女」感とか、キャラクター自体はわりとテンプレなので、ストーリーよりキャラクターが好きという方には微妙かもしれませんが、まどかさんの強烈なキャラクターにはもう笑うしかないです。だって地の文と戦う生徒会長ってどういうことだよ……。

 

とにかくものすごいので読んでほしい。そして語彙を失ってほしい。

おススメです。