めんどくさがりの自分の尻を叩く読書ブログ

読書は好きだ。だがめんどくさい。だけれど面白い本を読みたい。だから感想を書いて尻を叩くというブログ。

プリニウス(ヤマザキマリ、とり・みき著)の話

すごく面白い漫画なんですよ、プリニウスヤマザキマリさんというとテルマエ・ロマエが有名ですし代表作で異議はないのですが、テルマエ・ロマエとはまた違った角度で古代ローマを描いた傑作だと思います。

 

プリニウス 8 (バンチコミックス45プレミアム)

プリニウス 8 (バンチコミックス45プレミアム)

 

 

プリニウスというひとは例の博物誌の人です。作中でも好奇心の赴くままに旅をします。お供は筆記者のエウクレスと護衛のフェリクスと道中拾った謎の子供とその相棒カラスのフテラ、そして猫のガイアです。彼らは地中海のあたりを、プリニウスと旅します。

道中噴火する火山を観に行って火傷するプリニウスは元祖「台風の日に用水路観に行くおじさん」というか、命以上に興味を満たしたい人です。今思うと結構迷惑なひとだな。

で、西遊記みたいなプリニウス御一行に対し、ローマ中心部で繰り広げられるネロやその妃ポッパエアについての陰謀も描かれています。

こっちもすごいのです。当時まだ新興宗教だったキリスト教にからめて描かれたり、それも陰謀の一つでもっとヤバいやつが動いていたり。そしてネロはどんどん狂ってゆくのです……。

 

さて、二日ばかし前に発売された8巻ですが、とてもその二重構造がおいしくなってまいりました。

プリニウス御一行はアレクサンドリアの図書館でプリニウスの知的好奇心によってブレーキを食らったり、クレタ島でミノタウルスのロボットみたいなやつと戦ったりして、とても充実した冒険をしています。

一方ネロの妃ポッパエアは懐妊し、ネロは喜ぶのですが、ポッパエアにドクニンジンの陰謀が降りかかります。そしてポッパエアはお腹の世継ぎもろとも死んでしまうのです……。

ポッパエアを失ったネロの反応が凄まじい。ポッパエアを永久保存しようとするのです。ネロはどんどんおかしくなってゆき、ついにはポッパエアに似た女装青年(去勢済み)をあてがわれ、彼をポッパエアと認識して泣いて抱きつくのです。

そしてネロはプリニウスをローマに呼び戻すべく、兵士を送ります。

 

ネロがジャイアンリサイタルみたいなことをしたのは某擬人化マンガで知っていたのですが、こんなにおかしくなっての出来事だったのか……と呆然となりました。

ネロがとにかくどんどんおかしくなっていくのが辛い切ない苦しい。それに対してプリニウス御一行の楽しい(?)冒険が面白い。

 

このマンガのすごいところは圧倒的なストーリーと圧倒的な絵の両立ではないでしょうか。細部まで書き込まれた世界の描写や、当時の技術についてのワクワクに至るまで、微に入り細に入り、徹底的に描かれているのは驚愕です。

テルマエ・ロマエが面白かった人だけでなく澁澤龍彦が面白い人にもオススメします。とにかく圧倒的なんです。

プリニウス地中海世界に旅に出てからはピラミッドの神殿やミノタウルスなどなどファンタジー要素が強くて、そこがまたよいです。また、フェリクスさんの武闘派な活躍も素晴らしい。謎の子供もとても可愛い。あと猫のガイアがすばらしく可愛いのです。7巻でのガイアの活躍は驚きです。

このマンガの何がすごいって「前の巻の内容忘れた」ということがほぼないんですよね。インパクトばつぐん。

 

オススメです、プリニウス。間違いなく傑作だと思います。

さて、次回は動物農場か、はたまたなつぞら第2週か……。